中世のたたずまいを温存するバルト三国のうちリトアニアは、長い間ロシアの支配下にありました。特に、第二次世界大戦後は隣国ポーランドと同じくソ連の「コメコン機構」のもとに、農民たちは異なったシステムの中で生きなければなりませんでした。彼らは愛し続けてきた農耕を捨てさせられ、社会主義システムの中心的生産工場に移されました。長い間の大国の支配によりリトアニアの町はさびれ、貧しい生活が強いられました。
アンタナス・スツクスはそのような状況の中で自国の人々を写し続けることによって、自分自身がリトアニア人であることのプライドを守ろうとしました。彼は、リトアニア写真界の重鎮としてふさわしく、人々の貧しい生活の中に光る人間の喜びと、悲しみを記録してきました。長い間撮りためたその作品には、暖かい人間の姿が写っています。1960〜1980年代のソビエト社会主義時代にかくれたリトアニアの人々の表情に注目してみたいと思います。
「THE PEOPLE」は第一部(28点)、第二部(28点)にわけて展示。
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