Arata Hideya
荒田秀也展
「風の景」
2015年4月2日(木)-13日(月)
会場は3階ギャラリー
 


 私の生まれた故郷は岩手県北部、かつての陸奥の国、駿馬の産出地でもある。例冷涼な気候の風土のなか牧草地をかかえる原野に野生の馬を飼いならし、荒馬を巧みに操る人々が暮らしていたのではないか。騎馬民族の血をひく民であったと想いたい。
 鎌倉幕府は馬産地である糠部を九つにわけて牧を支配管理したと伝えられている。一戸、二戸から八戸といまも残る地名。そこで育てられた馬が、南部駒として知られるようになった。
 ちなみに私の何代か前の祖先は馬を商う馬喰いであった。

 何時頃からか、辺境といわれる国々にひかれ草原への旅がはじまった。かつて中央アジアでかいま見たある石人像に心をゆさぶられ、なぜか気になっていた。これはユーラシア草原に広くみられる石像で、モンゴル高原から天山北麓にかけて遊牧的牧畜を生業とした古代騎馬民族、突蕨のもので、その時代の墳墓に立ててあるものだと聞いていた。
 しばらくしてモンゴル行が叶い、アルタイ山麓の地の果てを知らぬような大草原のなかに千何百年も立ち続ける石人像を見たときの感激は忘れられない。左手に剣、右手に杯をささげて遠くを見つめているかの表情は死者を悼んでいるようでもあり死者そのものかもしれない。この石人の髭面は何を語るのか?静寂のなかからきこえてきたのは、古代に生きた私の先人達の声であった。にわかに遠い祖先との距離が縮まった思いがした。

 憧れの地をめざす旅は、心のふるさとと「原郷さがし」という瞳のものであり、ここに一条の光が見えてくる。
荒田 秀也
 荒田秀也 Arata Hideya





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