Mika Katagiri
片桐三佳個展
‘Shimi-shimi Jumbo!’
2011年2月14日(月)-26(土)
最近テレビ等のヨーロッパの風景を、
日本からの視点から(非日常の風景として)
見ている自分に気付く。
太平洋を一人いかだで揺らいでいる様な不安と夢と、
港に到着したあとの、連続する日常にひっそりと紛れ込む
不安と夢を体験して、その時の私には戻れないことを知った。
バルセロナでの生活を恋しく思いながら生活していたつもりが、
まるでこの地を離れたことなどないかの様に日々生活している。
旅というものは、移動により自分自身を変化させることである。
A地点からB地点、そしてC地点へ。
距離の移動、時間の経過、私自身の変化。
B地点に立った時に、A地点へは戻れないが、
B地点はC地点への希望を内包している。
旅をすると、自分は負けたという感覚を一度は抱く。
抱いていた希望は崩れ、価値観は少し壊される。
私にとってスペイン滞在という長旅は、地を這う感覚を味わい、
価値観を再構築し、自分にとっての幸福論を作り直す過程であった。
大きな距離を移動するということは、
それまでの自分との決別なのだと思う。
あの日、私を乗せて日本を出たのと同じ舟は、戻ってはこなかったのだ。
戻ってきた舟は、違う私を乗せていたのだから。
私は、一瞬で過ぎ去るB地点が含む生への希求のようなものを、
画面に最大限に定着させたいと思っている。