「ロートパゴス 遠い記憶の島へ」 加藤祐子
文明の始まり,エーゲ海に浮かぶ小さな島にロートパゴイ人=蓮の実を食う人々
(LOTUS EATER)が住んでいました。
やさしい目をした彼らにもらった
ロータスの実を食べると、それまでの記憶を失ってしまい
穏やかに、安楽のままにずっとこの島に暮らしたいと思うようになってしまうのです。
こころや魂が静かで、どこか甘美で夢幻。
ギリシャ神話にでてくるこの島は遠い記憶の中によみがえります。
いつの日からか、蓮が作陶のテーマになりました。
毎年夏が来ると、朝靄の立ちこめる蓮池に出かけます。
風がゆるやかに吹きぬけゆらゆらと波うつ蓮の葉。
日が昇ると大きく開いた花びらから,たっぷりとため込んだ光が洩れてきます。
かすかに漂う芳香が、遥かに遠い記憶、無限の時をよみがえらせるのです。
蓮のカタチを辿ることで,瞑想的気分にひたり心象風景にふれたいと願っているのです。
今回初めての個展では、
ギリシャ神話「オデュッセイア」の中に登場する蓮の実を食べる人々の住む島と、
この神話に題材をとって書かれたイギリスの詩人テニスンの「The Lotos Easter」に
イメージを得て,今までに作ってきた蓮の世界をこの夢想の島のようにつくることができたらという思いで創作しました。
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