大場匠展
-記械-
2006.02.6-24

大場匠は、
溶解炉で溶かしたガラスを吹いて成形する技法(吹きガラス)を用い、
銅パイプと吹いたままの状態のガラスで構成された作品を制作しています。
 記憶の「記」と機械の「械」からなるタイトル「記械」は彼の造語で、
息を吹き込むことで形作られるガラスを、
記憶の袋としてとらえています。
様々な記憶と記憶をつなげた機械(記械)として、
ガラスとガラスが銅パイプでつながっている作品が並べられました。
展示数は約7点。



-記械-  大場 匠

 記械とは造語である。いわば記憶を蓄えている想像上の装置。そのような物が自己の内面に存在していたらきっとこんな形かもしれない。私の制作スタイルはガラスを溶解炉で溶かして、それを金属製のパイプに巻き取り、吹きこんで形を作っていく。いわゆる吹きガラスというものだが、吹きガラスとは、自分の体内(肺)の中に蓄えた空気を金属製のパイプを通して1000度以上に熱せられたガラスに吹き入れて形をつくる。いうなれば、気(記)の入れ替え作業である。気は高温で柔らかなガラスの膜にぶつかり、なおも内側から外側へ突き進んでいく。ガラスの膜はその力をまともに受け、形を変化させながら伸び、膨らんでいく。
 人は記憶を持つ生き物だ。もとより生き物すべてが記憶を持っている(記憶していく)。科学的にはDNAとか脳の中の海馬が睡眠中に記憶を作るとか言われているが、私はもっと創造的に記憶の仕組みを考えたい。
 幼い頃みた図鑑で「体の仕組み」を図解で説明しているものがあった。それは人間の体の断面図で、体内に小人がいて、各臓器で働ているというものだ。口の中ではすり粉木機を使って食べ物をすりつぶしていたり、胃ではそのすり潰した食べ物を鍋で溶かしている。目には望遠鏡、脳にはたくさんの書記係や巨大なコンピューター(時代がかなり古いので)といった具合だ。稚拙に思えるが、そのころの私を満足させるには十分の内容だった。
 「記械」もその延長線にある。日々記憶されていく事柄を袋に詰めていく。その袋が一杯になると、次の袋に管を繋げ、また記憶を蓄積していく。その機械(記械)は増殖を続けていく。古い袋は破損していたり、強烈な記憶は、その形が袋に現れてくる。今もなお、「記械」は私の中で広がり続けていく。


大場匠略歴
1966 東京都生まれ
1990 東京グラスアート展 奨励賞受賞
1991 東京ガラス工芸研究所 研究科卒業
日本グラスアート展 旭ガラス賞受賞
1992 '92 国際ガラス展(金沢)入選
1994-96 日本クラフト展 入選
1996 金沢市卯辰山工芸工房 修了
1997-00 おしがはら工房にて制作
1998 現代ガラス展イン薩摩 入選
2001 千葉県千倉町にGLASSFISHガラス工房設立
現在に至る
個展
1997 大場匠ボトル展(六本木AXIS)
個展 (奈良 ギャラリーくうげ)
1998 個展(ぐらすはうすレーマー、熊本)
1999 ,00 ,05 個展(松屋銀座アートスポット)
2000 個展(千葉県館山市)
2003,05 個展(画廊椿、千葉)
2004 個展(ギャラリー蒼風、静岡)
個展(スポットライト、東京)
2005 個展(金沢 G-ウイングスギャラリー)
個展(ギャラリーくうげ、奈良)
2006 個展「記械」(六本木  ストライプハウスギャラリー)
グループ展
1991-94  驚展(青山,銀座 G−ART GALLERY) 出展
1993 夏の器(ガラス)展 (福井 クラフト IZUMI)
1996 近藤 稔、大場 匠 ガラス二人展(静岡 ギャラリー蒼風)
Talente´96(ドイツ ミュンヘン)
オシガ原納涼作品展(金沢 G-ウイングスギャラリー)以降3回
1997 GLASS NOW ガラス5人展(神戸住吉倶楽部)
大場 匠、田中 信彦 二人展(グリーンアーツギャラリー金沢)
1999 おかやギャラリー  グループ展(島根県)
2001 アーチストインレジデンスイン瀬戸に招聘される。
招聘作家作品展
2002 グループ展(山梨県立美術館)
2004 アーチストインレジデンスイン瀬戸招聘作家作品展(新宿パークタワー)
2005 ギャラリーくわみつグループ展
他、個展・グループ展 多数



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