藤田淳子ドローイング展
『ATMOSPHERE』
Junko Fujita

2005.12.05-24
「ATMOSPHERE」アトモスフェア(大気)は、
1980年代より20年間続くシリーズである。
作家は、そのシリーズの中で空気の流れを抽象的に表現している。
描いていく中での時代の変化、環境の変化、自分自身の変化、
すべてをマイペースに真摯に受け止め、作品にしてきた。
 およそ50年間画業を続けてきた現在、
藤田は「あれだけ自分の制作上で制約を加えていた垣根がとりはらわれ、
形式に於いても色彩に於いても
最近では自分の感性が求めているものに
より率直に自由になったようだ。」と語る。
 今なお表現への情熱を注ぎ続ける藤田淳子。
 2005年制作の新作約20点(小品も含む)を展示


 

ATMOSPHERE 藤田 淳子  
 今回の展覧会のタイトルも「ATMOSPHERE」だが、私の絵画の作品はおおざっぱに云えば「Landscape」の範疇に入るのかも知れない。私の創作の原点となるものを探ってゆくとこんな事を思い出す。小高い丘の上から見る海の先のさらなる彼方の大海原での大自然の刻々と変化する茫洋とした光芒の、ある時は静かに、ある時は嵐のドラマを心に思い描きながらそれを現実の海や空や光や空気を描くのではなく完全に抽象化した表現で如何に創作するかを模索した。そして「大気」と云うテーマを見い出した。
 「ATMOSPHERE」(大気)を1980年代の藤田淳子展のタイトルにかかげた。ある時はその茫洋とした広い大気の中を駆け巡る中で行く道を見失い彷徨う自分自身を夢想し、創作する。そこから「Labyrinthe」(迷宮)のサブタイトルが生まれた。
 1990年代には更に私の夢想は続く。大気の中をルーマニアの伝説の中の王たる「マイアストウラ」に私はなっていた。此の時はおもいっきり沢山の色彩の線を錯綜させ線の重層化をはかり私の気持ちを表現したかった。天高く日の神を恐れずに飛んだ為にやがて我が身は神の怒りをかい焼きつくされイカロスのごとく奈落の底に失墜するかもしれぬ不安を持ちつつ描いた。
 個展のタイトルをつけたはじまりは1970年代の2回目の展覧会で「ある日見た雲」、次に「Flying」そして「SOARING」80年代に「ATMOSPHERE」となりそのシリーズが現在迄続く。
 私の創作の原点の夢想空間が宇宙空間の言わばマクロの世界に達した時、今迄眼前に広がる巨大な空間をテーマにしていたが、マクロの対極のミクロの世界も実はその中に踏み込んでゆけば限りなく極小のしかし言葉を変えればそこにもミクロと云う広大な世界が広がっていると云う事に心が引かれて「Microcosmos」(極小の世界)と云うテーマが生まれる。
 20世紀の終焉の頃、科学の世界でヒトゲノムの解明が進みそれが完了したと云うニュースを知る。丁度その頃わたしは母を失った。母から受け継いだ沢山の遺伝子について心を巡らせていたので、2000年の個展では「Genome」のタイトルになる。
此の時の作品は色彩が極端に少なくなり線の数もギリギリの所迄そぎ落とした。描いていてもとてもつらく切なかった。このまま行けば虚無感しか残らなくなるのではなかろうか、もう絵筆は持てなくなるのではなかろうかと思った。
 しかしここを通過する事で私は私なりにゆっくりとスローテンポで再生を果たす事が出来たような気がする。あれだけ自分の制作上で制約を加えていた垣根がとりはらわれ、形式に於いても色彩に於いても最近では自分の感性が求めているものにより率直に自由になったようだ。



藤田淳子略歴
東京都小石川生まれ
1958 東京都芸術大学美術学部絵画科油画卒
個展
1970 自由が丘画荘(目黒)
1973 サトウ画廊(銀座)「ある日見た雲」
1974,75,77,79 みゆき画廊(銀座)
1979,83 自由が丘東洋信託銀行小ホール(目黒)
1980  櫟画廊(銀座)
1982 自由が丘ギャラリー(目黒)
1982,4 絵画館(銀座) 「ATMOSPHERE」
1983,85 鎌倉画廊(銀座)「ATMOSPHERE」
1987-89 gallery ART SPACE(青山) 「Microcosmos」
1990
シロタ画廊(銀座)
1992,94,97,99 ぎゃらりいセンターポイント(銀座) 「ATMOSPHERE」
2001 ぎゃらりいセンターポイント(銀座) 「Microcosmos-Genome」
2004 アートスペース羅針盤(京橋) 「Microcosmos Genome」
2005 ストライプハウスギャラリー(六本木)「ATMOSPHERE」
グループ展
1957,58  読売アンデパンダン展(東京都美術館)
1979 モダンアート協会展受賞
1980 日本美術家連名会員 モダンアート協会会員となり現在に至る
1983 〜 モダンアート展明日への展望展(埼玉近代美術館、横浜市民ギャラリー等)
1986-96 POINT NOW(横浜市民ギャラリー)
1997-03 WORK'S展(横浜市民ギャラリー)
2001 神奈川県,マレーシアぺナン州友好記念展(本郷台アースプラザ)
2003 KORE International Art Fair2003 ,(韓国、ソウル)
日韓国際現代美術展(神奈川県民ホール)
2004 ノーウオア展(神奈川県民ホール)
2005 反戦展(埼玉県、丸木原爆の図美術館)
その他
1984 モザイク壁画制作(世田谷,マンションエントランスロビー)

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