堀越千秋陶展
『秋の土を喰らう』

Chiaki Horikoshi

2005.10.07-27
  三代にわたる画家の家に生まれた堀越は、
東京芸術大学大学院終了後、
スペイン政府給費留学生として1976年にスペインに渡りました。
それ以来29年間マドリードに在住しています。
 現在世界各地で展覧会を開催。
朝日新聞読売新聞などの連載小説などの挿絵を手がける一方、
洒脱な文章でエッセイも書いています。
また世界的カンテ(フラメンコの唄)の歌い手でもあります。
 奔放な生き方で圧倒的な存在感を誇る彼の作品は、
豪快かつ繊細で、懐の深いおおらかさと生命への厳しい視線がかいまみえます。
 当ギャラリーでは2年ぶりとなる堀越千秋の陶展です
。昨年夏、堀越は埼玉県神泉村の山中に窯を制作しました。
今回の作品はその手作りの窯で焼かれた作品です。


千秋窯縁起 堀越千秋
 
 思えば不思議でならない。
 遊び半分で、友人の窯で粘土細工を焼いてもらったのがきっかけである。出てきたものは全て素晴らしく、私はびっくりした。
 味をしめて、私は沢山粘土をひねり、無理を言って何度も友人に焼いてもらった。その都度素晴らしいものが出来た。

 友人の窯は学校のものなので、そうそう私の都合だけでは焼くわけにはゆかないということも分かった。友人たちは、私自身の窯を作れ作れという。簡単そうに言うので、埼玉県神泉村の山の中をただ借りて、穴を掘り、レンガを積んで作った。若い人々が自然に集まってきて、ほとんどの作業をやってくれた。私はゴム長をはいて笑っていただけである。
 かくて、千秋窯は出来た。薪は山で切った赤松である。ぜいたくすぎると友人らは私を批難した。
 粘土は、ひねったりたたいたり伸ばしたりしている間に、おお!と叫びたいような形に偶々なることがある。その一瞬をとらえて、手を止めるのである。もの欲しげな器は嫌いだから、ろくろは使わない。私のものは、もの欲しげな点では人後に落ちないが、器ではない。用の美、なんてない。両手をそろえて水を飲むのが器のはじまり、といわれるが、それは果たして用の美か。水が飲みたいばかりではないか。飲み終えればたちまち元のすけベえな両手に戻る。
 私のはそれだ。土がおのずから美しい形に、成る。私はそれを発見して喜ぶばかりだ。そっとしておくと乾いて固まり、それを火にくべると、おのずからガラス質を汗のように出して、百億年分の酸化を、たった三日三晩であらわしてくれる。
 全部人まかせ、土まかせ火まかせ。そして出てくるものは全部国宝。有難くて、思わず西方に手を合わせることも覚えた。







堀越千秋略歴
1948
東京都に生まれる
1973
東京藝術大学油画専攻卒業
1975
東京藝術大学大学院油画専攻修了
1976
スペイン政府 給費留学生として渡西
1976-2005
マドリードをベースにスイス、フランス、東京、ソウル、にて個展等多数
1986
現代形象展(東京・ストライプハウス美術館)
1999
個展「20億年の笑い」(東京・ストライプハウス美術館)
2003
初陶器展「空腹に土を食う」(東京・ストライプハウスギャラリー)
2005
陶器展「秋の土を喰らう」(東京・ストライプハウスギャラリー)
1976-2005
現在マドリード在住
その他
1990 表紙・扉絵「パスクアル・ドゥアルテの家族」
カミロ・ホセ・セラ(ノーベル賞作家)講談社刊
1992
壁画 パリ、デファンス地区「KUPUKA-Aビル」のロビー壁画制作
1993
銅像 スペイン、アンドゥーハル市、故ラファエル・ロメーロ像(フラメンコ歌手)
1994
壁画 鎌倉、大蔵省印刷局鎌倉由比ヶ浜シーフロント鎌倉の壁画5点制作
2002
ジャケットパッケージ・CDジャケット原画
「武満徹全集<全五巻>」小学館 経済産業大臣賞受賞
逢坂剛、村田喜代子の著作の表紙挿画担当
カンテ(フラメンコノ唄)に関しては
スペインのラジオ及びTV(マドリード・ロンダ・セビリア・etc.)
他多数出演。カンテを歌う堀越氏はスペイン人の注目を集め、テレビ出演や公演などを行っている。
主な著書・エッセイ集・詩画集
1982 木版詩画集「ふいごの風」 (詩 フランシスコ、サンチェス、グラべーラ)
1984 木版詩画集「相剋の花」  (詩 小川英晴)
1991 「フラメンコ狂日記」堀越千秋著(主婦の友社刊)
1992 大型絵本「マイトレーヤの散歩」(架空社刊)
絵本「きしょうかんそく船」(かがくのとも・福音館書店)
1994 銅版詩画集「なつやすみ」 (詩 小川英晴)
1995 絵本「ふえる・ふえる」 (年少こどものとも・福音館書店)
1996 絵本「ふるやのもり」 (読み聞かせ絵本シリーズ4・瑞雲舎)
1998 堀越千秋著「スペインうやむや日記」(集英社)
1999 堀越千秋著「アンダルシアは眠らない」フラメンコ狂日記(集英社文庫)
堀越千秋著「スペイン七千夜一夜」(福音館書店)
堀越千秋画「見て忘る」俳句 森 澄雄 (架空社)
2002 堀越千秋著「スペインうやむや日記」集英社文庫
2003 堀越千秋画「ノアのはこぶね・バベルの塔」
再話・作ロジャー・パルバース(ラボ教育センター)
絵本「いかつり舟」(かがくのとも・福音館書店)
2005 絵本発売予定。他多数

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