ポーランド共和国大使館後援
WHITE-RED-BLACK
ボイチェフ・プラジモフスキ写真
Wojciech Prazmowski
2004.03.05-27

 
ボイチェフ・プラジモフスキは、1949年ポーランドに生まれ、ポーランドが1989年の無血改革を果たすまで社会主義体制のもとで過ごした。1990年ストライプハウス美術館(当ギャラリー前身)で開催した「After Man Ray Vol.3」に出展以来、アメリカ、ヨーロッパ各地で紹介され、今やポーランドを代表する写真家となった。

ボイチェフ・プラジモフスキ
WHITE - RED - BLACK
白-赤-黒

 私の驚嘆から、「白-赤-黒」というアイディアは生まれた。「白-赤-黒」の白-赤はポーランド旗の色で、この国の中で起こった事柄という構想によるものである。
 1994年、隣の国、白ロシア(ベラルーシ)との国境から、さほど遠くはないオクウエックとミカシュフカの中間にあるチャルナ・ハンチャを訪れた。そこは、ひっそりと静まりかえっていた・・・突然、私の目の前にまるで幻のように林を背景にして、スーパー・マックスというネオンのある堀っ建て小屋が現れた。宣伝用の小旗が、入り口で購買欲をかき立てるかのように、はためきながらアイスを買わせようとしている。内部のガラス扉の冷蔵庫には、22種類ものビールが冷えていた。そして、客を待つ白いテーブルはすでに林の奥のどこか遠くへ消え去ろうとしていた。
 数日後、次はこの東部国境にほど近い村落を訪問した。土曜日、森番小屋(森林監視人宿舎)では、農業経営者の娘が、最新モードのTシャツ姿で、隣村のディスコに出掛ける時、大人達は庭のテーブルで祝宴をあげていた。彼女からはイッセイ・ミヤケブレンドの香水の匂いがプンプンと…くぐり戸のあたりからはテーブルに置かれた密造酒の匂いと、この香水の匂いが混じりあっていた。
 2年後、オルクシュ近郊のオクラジョヌフ村に私は向かった。ブエンドフスカの原始林の名残りがぼんやりと浮び上がる背景の中で…突然、この私にとって馴染み深い景色の中に、何かのきしむ音がした。次々とコカ・コーラと書かれた巨大なトラック3台が近づいてくる音だった。短い小休憩。お喋りと煙草。そしてまた走り去って行った。この状況は最初、自分には超現実的なものに思えた、しかし時とともに、これがポーランドなのだ!と自覚するようになった。
 数年後、この私の驚嘆についての多くの確証が、ミエチスワフ・ポレンブスキの「状況としてのポーランド性(ポーランドの特徴)」という書物の中に書かれているのを私は見つけた。
 『ボイチェフの「白-赤-黒」は悲壮的であると同時に、またテーマの寄せ集めでもある。牧歌的であり、ロマンチック、暫定的、偶像破壊的であり、かつまた灰色でさえある。崇高であると同時に貧しくもある。われわれ、すべてがそうであるように。』(「状況としてのポーランド性」ミエチワフ・ポレンプスキ「文学出版.2002年」)
 この写真シリーズは、静物のカタログの観を呈している。そこに人間は存在せず、存在していたとしても、それは見せ掛けに過ぎない。私にとって、すべては客体である、とはいえ何者かがそこにはいる:創造者、建築家、建設者、施工者。それらの価値、品質、われわれの評価にかかわらず、それらは作者不詳のものではない。それらはすべて警告的性格を帯びたものである。
  
訳:つかだ みちこ
ボイチェフ・プラジモフスキ略歴
1949  ポーランド、チェンストホーワに生まれる
1972-4 チェコスロバキアのクリエイティブ・フォトグラフィ・スク−ルにて写真を学ぶ
現在 ポ−ランド芸術写真家協会会員、ウッジ映画フィルム学校マスター
1988 「The First World Exhibition of Spoilt Photographs」
Mala Gallery(ワルシャワ)/BWA(ルヴァン)
1989 Horizone Europeo」Casa de Culttura Reyes Heroles(メキシコ)
1990 「After Man Ray vol.3」ストライプハウス美術館(東京)
1992 「A Family Album」フォトフェスタ
;George R.Brown Convention Center(ヒューストン)
/Image Gallery(オールフス;デンマーク)
 /Galerie Photo Sephi(Bruksela;ベルギー)
1993 個展Jackson Fine Art Gallery(アトランタ)
1994 個展Jackson Fine Art Gallery(アトランタ)
個展Schnieder Gellery(シカゴ)
「Past Imperfect」Lowinsky Gallery(ニューヨーク)
「L’Ange Brise-Mission Photographique Transmanche」
CRP Nord Pas de Calais(ウッシー;フランス)
1995 「L’Ange Brise-Mission Photographique Transmanche」
L’Ecole Superieure d’Art(カンブレー;フランス)
1996  個展Dumond Kunsthalle(ケルン)
1997  個展 ストライプハウス美術館(東京)
1999 個展 ストライプハウス美術館(東京)
2002 塚原琢哉とのコラボレーション ストライプハウスギャラリー(東京)
2003 個展「Family Album」ストライプハウスギャラリー(東京)
2004 個展「白-赤-黒」ストライプハウスギャラリー(東京)
その他、世界各地で個展 多数
コレクション:ニューヨーク近代美術館、オデンセ写真美術館、ヴロッワウ現代美術館、エリ−ゼ美術館、カレ−美術館、日本大学芸術学部、ストライプハウス美術館


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