私が最初にステンドグラスを始めた頃からみると、ガラスの種類はもちろんのこと、色、形、そして加工技術、技法それにともなう工具、機械その他ありとあらゆる物が格段の進歩を遂げ、誰でも気軽に様々な技法のガラス作りを楽しむことができるようになり、いろいろな視点からガラスに興味を持たれる方が増えてきました。
それとともにガラスを自宅に取り入れたい、という方も多く、様々な場面で私の作品を持って提案させていただきましたが、少しでも多くの方に色々なガラス作品に触れてほしい、そして家庭の中でこんな所にこんな風にガラスを使っていますということを実際に見てほしい、と思うようになり、ここ3年自宅にて年一回、小さな小さな個展を行ってきました。ランプを置いたり、触器(私の作る器は、食器ではなく触器なのです。当然、食べ物を盛るためのものでもあるのですが、手に持って触れてその感触を楽しんで使ってほしい、と思い名付けました。)を実際に使って、おもてなしをしてきました。
今回は、それをひとつの形とし、もう少し拡大し、ギャラリー空間をひとつの家に見立てました。茶道の世界では、お客様をお招きする時、路地から始まり部屋の設え、そしてお茶をたてるまで様々面に神経を行き届かせおもてなしをします。私たちも日常、お茶の席までとはいかなくとも、お客様をお招きする時は居心地の良い空間を作り、そして料理、器などに心配ることと思います。お客様を玄関から家の中へお通しするそのままの姿をガラスを使って表現しています。
まず、門を入ると玄関ではガラスの小物がお客様を迎えます。リビングへ進むとステンドグラスが窓の光と色の世界をもたらします。そして、室内には優しいランプの光が満ち、テーブルの上には、花を飾り、料理を盛るための器や酒器が置かれ、お客様をお待ちしています。
ガラスには色々な技法があり、そのひとつずつがそれぞれ独自の表情を持っています。耳を澄ますと個性豊かなガラスたちのメッセージが聞こえてくるかも知れません。