Takuya Tsukahara
 Silver NoteーSequel
 
塚原琢哉写真展「続・銀の日記」
 
2012年12月17日(月)-26(水)

 


 私が、1972年初めてポーランドを訪れ、そこで経験した時の感動が、その後の人生を大きく変える事になった。日本や西欧とは異なる社会主義という環境の中で、私の出会った多くの芸術家たちが否定の概念を心に打ち立て、作品を世界に発表した。映画、演劇、写真、ポスター、などの作家たち。 作品を通して彼らの人生観や創作の強い意志が、この国の苦難の歴史の中に書き込まれている事を感じた。彼らは、芸術家同士の絆と家族愛とを何よりの宝であるかのように、強く日常を生きてきた。
 私が、多くの友人から社会主義の矛盾の実情を知り、平和とそれを阻害する要因のテーマが生まれ、数々の作品を完成させた。また、私の作品がポーランドや東欧の隣国において展覧会ができたのも、作
品のテーマに流れる私のアイデンティティに彼らも共通する思いがあったのだろうか。
 そのコンセプトはやはり私が生まれた太平洋戦争のさなかに、幼少ではあるが生涯消え去る事も無いほどの経験が、戦争とは何かというジレンマが、戦争被害を受けたポーランドで、他国とは比較にならないほどの過酷な苦悩を生き抜いてきた彼らの姿を目の当たりにして、戦争の起こるメカニズムをあらゆる角度から見つけ出さなくてはならないと思った。
 ポーランドとの絆が出来た事によって、平和がどんなに遠くにあったとしても、未来を失わない人たちが、そこに生きていることに感動した。
 その感動を1981年に「銀の日記」として銀座・和光ホールで発表した。その後、ポーランドの情勢はソビエト支配による苦難の道がますます激しくなった。市民はポーランド連帯の運動とカトリックの信仰に助けられ、家族愛は社会が一つになるほどの力を育て、カトリックと連帯とを結束させた。ついに、1989年の無血革命は東欧革命の扉を開いた。その時がソビエト連邦と冷戦の崩壊であった。混迷を極めた時代から解放されたポーランドはEUに加盟し、自由社会を目指し、国境は取り除かれ瞬く間にヨーロッパから溢れるような物流と金が流れ込み、ポーランドは旧東欧一の富裕国になった。しかし、その恩恵に取り残された地域と人々がいた。ソビエトの崩壊によって石炭や鉄鋼などの工業資源を供給してきた炭鉱や工場に働く人たちのエリア。工場に若者を送った過疎の町。そこには未来を描けない人々と、静まり返った街にかつてのポーランドとは違った現実があった。わたしが出会った子供たちの表情や街にはむしろポーランドの苦難を乗り越えてきた記憶が残り、ノスタルジーのように、静けさと暗さの中に除くかすかな明かりが、美しさをはなっているようにも見えた。EU加盟後のポーランドに、度々訪れて撮影してきた感動の数々を「銀の日記」の続編として展覧致します。
2012年12月 塚原琢哉

 塚原琢哉略歴 Takuya Tsukahara
 1937 東京に生まれる
 1959 日本大学芸術学部 写真学科卒業
 1972 画家ガーベル・レホウビッチ氏の招きでポーランドを訪問。
 1974 アンセル・アダムス氏の招きで「ある一つの世界」展、カーメルサンセットセンター(カリフォルニア)ウイン・バロック、ビル・ウエストン氏らと交流。
ポーランド芸術写真家協会の招きで「ある一つの世界」展、ポーランド12都市を巡回。
 1975 文化庁派遣芸術家在外研修員(第一回写真派遣)(フランス、ポーランド)。
パリにてフォロンのシルクスクリーン工房で写真を使った版画を制作。
 1976 ヨーロッパ写真連合ユローフォト会員となり、フロリス・ノイジュス氏らと交流。
 1979 ポーランド芸術写真家協会名誉会員となる。
 1981 ストライプハウス美術館設立、現代美術と写真の紹介を始める。
(2000年閉館する)
 1991 「海原幻想」写真陶板壁画、大阪に完成。(サンピア大阪)
 1996 リトアニアのオストラブラムの聖母イコンを最後に「マリア幻想」の撮影を完了する。
ローマ法王ヨハネ・パウロ2世に謁見し、ポーランドイコンのポートフォリオを献上。
 1999 毎日新聞社より「101のマドンナ ポーランドイコン巡礼」出版、アンジェイ・ワイダ氏が序文を寄せる。
 個展
 1967 Vol.1「ある一つの世界」壱番舘画廊
 1968 Vol.2「ある一つの世界」壱番舘画廊
 1970 Vol.3「ある一つの世界」壱番舘画廊
 1974 「塚原琢哉の触覚的空間『白いあそび』」銀座・和光ホール
 1981 「銀の日記」銀座・和光ホール
 1988 「Ocean Fantasy」グダニスク(ポーランド)
 1990 「海原幻想」銀座和光ホール
 1996-7 「マリア幻想」ヤスナグラ修道院美術館(ポーランド)
 1998 「ポーランドの二つの祈り」コンタックスサロン(東京)
「Polish Madonnas」Polish Institute Stockholm(スウェーデン)
「Ocean Fantasy」クラコフ国立美術館日本美術・技術センター
「Manggha」(ポーランド)
 1999 「サボテン幻想」展 銀座・和光ホール
 2000 「マリア幻想」展 ストライプハウス美術館(東京)
「Polish Madonnas」カトヴィッチ大司教区美術館(ポーランド)
「Cactus Fantacy」Mala Gallery(ワルシャワ)
 2002 ボイチェフ・プラシモフスキとのコラボレーション ストライプハウスギャラリー(東京)
塚原琢哉ウクライナ見聞写 ストライプハウスギャラリー(東京)
 2003 「Cactus Fantaci」Prospekto Gallery(リトアニア・ビルニウス)
写された幕末写真展」ストライプハウスギャラリー(東京)
写された幕末写真展」クラコフ国立美術館日本美術・技術センター
「Manggha」(ポーランド)
 2005 「Ocean Fantasy」Foto Club (クロアチア・スプリット)
 2006 August 1944 Paris」 ストライプハウスギャラリー(東京)
 2007 「Sirejia」パルドビッツェ(チェコ)
 2010 「シレジア」東京工芸大学 写大ギャラリー
 2011 銀の日記」ストライプハウスギャラリー(東京)
The Garden」ストライプハウスギャラリー(東京)
 2012 「続・銀の日記」ストライプハウスギャラリー(東京)
 出版物
ギャラリープレス「塚原琢哉の触覚的空間『白いあそび』」
ストライプハウス美術館「銀の日記」
ストライプハウス美術館「海原幻想」
毎日新聞社「101のマドンナ・ポーランドイコン巡礼」
毎日新聞社「サボテン幻想」
 コレクション
クラコフ国立美術館日本美術・技術センター「Manggha」(ポーランド)
ヴァチカン
ヤスナグラ修道院美術館(ポーランド)
ICOGRADA(ベルリン)
オークランド美術館(カリフォルニア)
東京都写真美術館
日蓮宗久寺図書館
日本大学芸術学部図書館
東京工芸大学芸術学部
ストライプハウス美術館


静けさのただよう町


イチゴを売る農夫


炭坑夫アパートの一つのボールが子供達を笑顔にする


重工業地帯の終焉


コンクリートの聖人


Top年代別索引作家別索引開催中の展覧会

今後の展覧会イベント情報地図

ストライプハウスギャラリー
〒106-0032 東京都港区六本木5-10-33-3F
TEL:03-3405-8108 FAX:03-3403-6354
e-mail:info@striped-house.com