Naoto Kinoshita
木下直人展
MOUNTAIN

2008.2/26(tue) - 3/5(wed)　

　

　わたしが日々生活している風土と、彫刻的身振りとを、どのように一致させるかがこのインスタレーションの主題です。培ってきた自然観を反映するため、地理的、心理的な日本のへそとも言える富士山をモチーフにしました。8年間スペインに暮らし、日本に帰ってきた実感を初めに覚えたのは、うっすらと霞に浮かぶ富士山を見たときでした。富士山の端正な造形は、さまざまな想像力をかき立てます。
　
　一方で、毎日のように繰り返される卑屈で残虐な事件が、日本にはあります。日本人の文化や自然観がプラスチックになっていて、制度のみが浮き上がって実体を見ない、政治や教育が裏打ちされていると思われますが、じつは明治以降ずっと深くなりつつある、分裂的な症状と捉えることができると思います。
　
　日本人としてのアイデンティティーを求める行為には、あまり意味はないということです。アイデンティティーは、探してもどこにも存在しません。現代社会は自然からあまりに乖離しているために、同一性という幻想を必要とします。自己同一性とは一種のユートピアですが、その方法論は、各個人にゆだねられます。そして、自然は他者であり、自然としての富士山も他者であるということはとても重要です。自然という存在そのものに意図はなく、私たちが存在することは、奇跡的な偶然なのですから。

木下直人

1970	兵庫県生まれ
1977-81	メキシコ・シティー滞在
1988	京都精華大学造形学科洋画科修了
1998-2001	マッサーナ美術学校彫刻科（バルセロナ、スペイン）
グループ展
1996	'3rd Stone' / 京都精華大学春秋館ギャラリー
1999	'99洞爺村国際彫刻ビエンナーレ
2001	(re)desubrir, ／パブリック・アート／バルセロナ自治大学 'Elisa' 第２回彫刻コンペティション／Palau Robert、バルセロナ
2002	ミネラルウォーター・ボトルデザインコンペ、FAD、バルセロナ
2003	Studio Gas オープニング・レセプション、バルセロナ
受賞歴
2000	'Generaci_n 2000', Caja Madrid, 買い上げ賞
コレクション
2000	'Generaci_n 2000', Caja Madrid
イベント
2003	'Pig's Party' / Studio Gas、バルセロナ
ビデオ・スクリーニング
2003	'Touch The Retina', Mau Mau Underground, バルセロナ
2004	'PIGS', Mau Mau Underground, バルセロナ
2005	'Still Life', Mau Mau Underground, バルセロナ
ビデオ・プロダクション
2005-6	'Coshida'プロジェクト、Mollet del Valles、バルセロナ